テックアート様から、セッティングサポートの御依頼がありました。
今回のAE86は、中古の5バルブ4A-G。
元々中古エンジン+MoTeC仕様だったお客様が、別の中古エンジンに載せ替えたため、再度、現車セッティングすることとなりました。
完全ノーマルで、オーバーホールしていない中古エンジン。元のエンジンと同じなので、現車セッティングは不要なのでは? と思う方もいるかもしれませんが、「ノーマルならだいたいどのエンジンでも大丈夫」なセッティングと、「現車に合わせて詰めたセッティング」には、大きな違いがあります。
例えば中古エンジンの場合、数万キロ走行してきた中で、さまざまなコンディションが生まれてしまいます。中には、バルブタイミングが大きくズレている物もあります。
ズレたタイミングに合わせて燃料噴射タイミングを合わせた場合、そのエンジンではバルブが開いた瞬間に、最適な量の燃料がシリンダーに送り込まれます。しかし、同じセッティングのまま別のエンジンを制御しようとすると、バルブが閉じているタイミングで燃料が噴射される可能性もあります。
こうなった場合、バルブが開けば燃料はシリンダーに入りますが、ポートに多くの燃料が付着するため、燃料が不足してしまいます。元のエンジンでラムダ(空燃比)を適正に合わせてあった状態であるほど、燃料不足は深刻になってしまいます。
もし、ギリギリまで薄くセッティングしていた場合は、失火が発生するかもしれません。燃料が足りていたとしても、薄すぎる混合による燃焼温度の上昇から、デトネーションが発生する可能性もあります。
同じエンジンだし、ノーマルだから大丈夫。という考えは、本当に現車に合わせて詰めたセッティングであるほど、危険なのです。
エンジンは数百ある部品の集合体です。中古エンジンは、それぞれが使用された環境ごとに違う損耗をしています。新品時の製造誤差でさえ現車セッティングでは差が出るので、中古ともなればその差は顕著に現れてしまいます。
現車セッティングを取ったデータは「同じ仕様だから流用しても大丈夫」ではありません。今回のように、必ず再セッティングすることを、強く推奨します。