2022年 04月 05日
■追加インジェクター■ |
社外品のターボチャージャーに交換したり高いブーストに設定しても、適切な空燃比になるように燃料も増やさなければパワーは出ません。
最大出力を追求する際に必要なのはブーストを上げることではなく、「いかに多くの燃料をエンジンに飲ませるか」です。
もちろん適正空燃比を維持した状態で多くの燃料を使用するという意味なので、必然的に高ブーストは必須なのですが、目標出力に適合しないターボチャージャーを組み合わせると、ブーストだけ上がって出力にならない、排圧ばかり高くなってデトネーションのリスクが上がり、むしろブーストを落として点火を進めた方が速い車に仕上がる場合もあります。
そんなターボチューンの黎明期、現代のように純正インジェクターを大容量化して精密制御ができなかった頃、追加インジェクターと追加インジェクターコントローラーはパワーアップに必須のパーツでした。
高風量な社外タービンのブーストが掛かるタイミングで、追加したインジェクターから不足する燃料を噴射して空燃比の帳尻を合わせるのです。
エンジン回転やブースト圧に応じて追加燃料を調整する製品が各社から販売され、当初はざっくりした噴射設定しかできない製品でしたが、しだいに各回転域ごと、ブースト圧ごとの噴射量を設定可能な物が販売されるようになりました。もちろんノートPCを接続して調整するような物ではなく、調整ツマミやスクリュードライバーで設定するタイプの物がほとんどです。
そんな追加インジェクターコントローラー全盛期の中で、時代を数年先取りする驚異的な製品が登場します。まるでメインECUの燃料マップのように、作成した三次元燃料マップをEPロムに焼いて取り付けるタイプの追加インジェクターコントローラーです。
当然、これを使いこなすにはパソコンやロムライターを所有している事が大前提ですが、まだ純正ECUのロム書き換えですら定番ではなかった時代。ほとんどのチューニングショップにパソコンが無かったため、存分に使いこなせたのは極一部のエンジニアだけでした。
性能に時代が追い付いていなかったその製品は、残念なことにロングセラーにはならず、製造終了となってしまいました。
時代が移り変わり、ロムを書き換える現車セッティングが全盛となり、MoTeC M4が国内で販売され、国産のフルコンもいよいよ登場…となった頃。
既にRB26など主流のエンジンで追加インジェクターは下火となっていましたが、ロム書き換えの範疇を超える一部の高出力チューニングや、ロムチューンの自由度が低い車種では、「ロム書き換え+不足分を追加インジェクター」という仕様が健在でした。
そんな中、その頃話題だった某スペシャルエンジンを搭載したチューニングカーが、いよいよロム+追加インジェクターからフルコンに変更しよう…というタイミングになりました。
で、そんなタイミングで「あの追加インジェクターコントローラー」が偶然発見されました。製造終了から何年も経っているだけに、本当に偶然の出来事です。
なにせ三次元燃料マップを構築できる製品です。メインインジェクターに繋いで制御することもできそうな気がします。
某スペシャルエンジンを搭載したチューニングカー…のプロジェクトに関わっていたメンバーは、当時「あの追加インジェクターコントローラー」を使いこなしていた面々。喜々として設定を始めたのですが…
時代の移り変わりは残酷です
「あの追加インジェクターコントローラー」が発売された当時と違い、ターボチャージャーが劇的に進化したことにより、チューニングエンジンのレスポンスは何倍も鋭くなっていました。そして、日進月歩で高性能化が進む電子回路も、当時で言うところの10年前の製品となると完全に時代遅れ。
エンジンのレスポンスに対して燃料噴射の追従遅れが大きく、一気にフルブーストまで立ち上がって「一拍遅れて空燃比が合う」ような状態。エンジンに置いて行かれるレベルの処理速度では使うことができません。残念ながらこれを使うのは断念。フルコン制御となりました。
MoTeCとは関係のない過去の話ですが、電子部品の処理速度、動作速度の遅さが、エンジン制御に甚大な影響を及ぼす事を知った瞬間でした。
そして今、MoTeCは他のフルコンと比べて何が良いの?と聞かれた際に、胸を張って答えられるのが「処理速度の速さ」です。
古いパソコンやスマホで多少動作に重さを感じたとしても、使えないわけではありません。イラッとする人も居るかもしれませんが、自分さえ我慢できれば問題なく使えます。
これがエンジン制御の場合、エンジンのレスポンスが悪くなったり燃費が悪くなるだけではなく、急激に燃料が薄くなるとエンジンブローする危険があります。
エンジン性能を向上させようとチューニングしていっても、「組み合わせた部品の中で一番劣った物の性能が上限」です。例えば1000ps用と言われているターボやピストンを組んでも、コンロッドが600psで折れるなら600ps以下でしか使えません。エンジンすべてを1000ps対応部品で仕上げても、クラッチが600psにしか対応しなければ600ps以下でしか使えません。
同じように、制御レスポンスが劣るECUを使用した場合は、攻めたセッティングにはできません。鋭く立ち上がるブーストに追従して燃料噴射ができないならば、鋭く立ち上がらないエンジンに造り直すか、高性能なECUに変更する必要があります。
MoTeC M800Aはメインインジェクターを大容量化できるだけではなく、1気筒で2本のインジェクターをHi/Lo噴射する制御も可能。もはや追加インジェクターを使う必要の無いスペックです。
不調を抱えたkジェトロニック…
フラップエアフロのスプリング調整…
追加インジェクター調整…
連載で昔のことを書いてきましたが、昔は苦労が絶えなかったけど今は楽だよね。という話ではありません。
温故知新。
過去の制御や対応方法を思い返し、知識として蓄えた上で新しい制御を使う。こうすることで、見えなかった物が見えるようになり、気が付かなかった事に気が付くことができるのです。さまざまな制御のさまざまな苦労も、今ならMoTeC M800Aを使うことで解決できますので、是非何かの機会がありましたら弊社の御相談ください。
by avo-motec
| 2022-04-05 18:46
| ブログ
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