2022年 04月 04日
Dジェトロニック |
エアフローセンサーを使用せず、圧力センサーでインマニ内圧を計測し、燃料噴射量を決定するのがDジェトロニック。名称はボッシュの登録商標です。
弊社のMoTeC M800Aは、この方式でエンジン制御をおこないます。
どうしてインマニの圧力で吸入量が測定できるのかいうと、仮にインテークマニホールドの負圧が70kPaで、その時の大気圧が100kPaだった場合は、その差圧分を吸気している…という計算がおこなわれているのです。
ただし、大気圧は日によって変化します。負圧が70kPaであっても、大気圧が90kPa近くまで下がれば吸気量は減り、大気圧が110kPa近くまで上がれば吸気量は増えます。つまり、インテークマニホールドの圧力を計測するだけでは、エンジンの吸入空気量は正確に測定できません。
アクセルが開いた状態であればサージタンク内の圧力は大気圧に影響されて変化するため、その数値から吸入量を認識できそうな気もしますが、実際にはセンサーの位置や吸入空気の流れ、吹き返しや渦など予測不能な条件が発生する場所だけに正確性に欠けた情報となってしまいます。
インマニ圧だけではなく、「大気圧センサー」を追加して外気圧を測定すれば解決しますが、一般的にMoTeC M800Aでエンジン制御する際は、圧力センサーは1個しか使用しません。
何故M800Aはひとつの圧力センサーで問題なく制御ができるのか。その理由は、イグニッションONでMoTeCに電源が入った瞬間(エンジンが掛かってない状態)、MAPセンサーの数値を計測して「大気圧の基準値」としているからです。
これならMAPセンサーがひとつしか無くても差圧を測定することができます。ただ、「エンジン始動した瞬間は高気圧だったのに、走行中に低気圧になった」というシチュエーションもゼロではありません。登山道など標高差がある場所を走る場合には、麓でエンジン始動して山頂まで走る頃には大気圧に変化が起きます。MoTeC M800Aはクローズドループ制御を行うので、実際問題、このくらいの差で不調になるケースは少ないですが、少ないながらも存在します。
そのような場合にのみ、大気圧センサーを追加して、大気とインマニの差圧をリアルタイムで測定しつつ制御することを推奨します。
ちなみに、
ブースト計が指す「0」は、エンジンの負圧もブーストも無い大気圧状態を指していると思いますが、上で説明したように大気圧は日によって変化します。
つまり、エンジン制御するフルコンが「大気圧=0」という認識では、日によってセッティングがズレてしまうのです。
MoTeC M800Aの場合、絶対圧力「真空=0」を基準としています。大気圧が90kPaの時は90kPaに合う制御、大気圧が110kPaの時は110kPaに合う制御を「当たり前のようにできる」のは、このような制御をおこなっているのが理由(ひと世代古いMoTeC M4やM48も同じ制御)です。
「MoTeCはレース用だから街乗りには向かない」…というような話は、日本で販売を開始した30年前から言われております。しかしその一方で、ストリートでしか乗らないお客様から「MoTeC制御にしたお陰で乗りやすくなった」「快適に乗れるようになった」という声も、たくさん頂いております。
私達は、実際に乗って感じて頂いたオーナー様の声、喜んで頂いた笑顔がすべてだと思っております。今後もお客様に笑顔になって頂ける制御を追求していきます。
ちなみに、ここだけの話ですが、M800Aはエアフローセンサーを接続してLジェトロでの制御もやれるように設計されています(弊社ではそのような使い方をしたことがないので調子良く使えるかどうかは定かではありません)。
■おまけ 圧力スイッチ■
Dジェトロとは違いますが、ボルトオンターボと言えばキャブ+ターボだった80年代前半には、「圧力スイッチ」という物を使用したハードチューニング車輌が存在しました。
キャブレター+ターボ仕様ですが、サージタンクに「0.2キロでON」「0.4キロでON」「0.6キロでON」のような圧力スイッチをズラリと取り付けて、各スイッチがそれぞれインテークパイプに取り付けられた小型インジェクターと直結されている…という物です。
原理的にはスイッチONで全噴射する小型インジェクターが、ブーストが上がる度に1本、また1本と噴射するという物で、アクセル全開でしか使用しない最高速計測会用のエンジンに使われていました。
制御というよりギミックの範疇なので、エンジン特性を一切考慮に入れていません。当然これだけではエンジン回転数や負荷次第で空燃比(当時は排気温度)が大きく上下するため、「ツマミを回すことで噴射量を調節できるインジェクター」も装備していました。
ドライバーが運転しながら排気温度計をチェックして、このツマミで微調整しながら全開走行していたのです。もちろん最高速を担当したドライバーも、チューニングの知識がある「エンジニア兼ドライバー」です。
最終的に人の手でマニュアル補正があったにせよ、複数のギミックを連続作動させることで「制御」になっているので、(メインはキャブですが)日本初の圧力制御だったのだと思い返します。
まだ電子制御の技術どころかノートPCすら存在しなかった時代(NECからPC9801がデビューした頃)、このような自動制御を作り上げ、記録と記憶に残る偉業を達成した当時のエンジニア様を尊敬します。
by avo-motec
| 2022-04-04 14:45
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