2022年 03月 31日
デトロイトロッカー |
直進安定性が良くなることや、トラクション性能の向上、ドリフト走行用として、リミテッドスリップデフ(L.S.D)は走りに不可欠のパーツです。
L.S.D無しの一般的なデフ(オープンデフ)の場合、左右のタイヤの回転速度が大きく変化する際の制限がありません。交差点などを曲がる場合、内側のタイヤに対して外側のタイヤの方が何倍も多く回転しますが、このように「片側だけ多く回せる」もしくは「片側だけ少なく回せる」のが一般的なデフ。
一般道では非常に走りやすいですが、例えば路面の状況で片方のタイヤだけ滑りやすい状況になると、「片側だけ空転して反対側は停止」という、前に進まない状態になってしまいます。同じように、サーキット走行でコーナリング中にイン側が浮くほど攻め込んだ場合、イン側のタイヤが空転して失速してしまいます。
これは、駆動輪を左右直結すれば解決します。直結しておけば、片側のタイヤが空転することもありません。ところが、左右輪が直結すると、交差点のような場所で外側と内側のタイヤの速度が変わった際にうまく曲がれなくなってしまいます。これを解消して通常走行時の曲がりやすさとスポーツ走行時のトラクション向上の両立をしてくれるのが、「いきなり直結」ではなく「内部にクラッチ機構がある」L.S.Dです。
L.S.Dは各社が独自の性能を追求し続けた結果、日本独自のガラパゴス的進化を遂げて、あらゆるニーズに対応できる超高性能品が選り取り見取りです。
前置きが長くなりました。
今回解説するのは、L.S.Dの話ではななく、誰にもお奨めできない禁断のアイテム
「デトロイトロッカー」
です。
これを言葉で解説すると「L.S.Dの行き着いた先にある究極点」のように誤解する人が居そうなので難しい。
L.S.Dが開発されるより前にあった「アメリカンマッスルカー用のL.S.D風の部品」です。
現在のL.S.Dは多板クラッチが半クラ状態から強い力で圧着されることでロック状態となりますが、デトロイトロッカーは多板クラッチではなくドグミッションのドックリンクのような構造で、オープンデフか完全デフロックにしかならない「半クラッチが無い」製品です。
これがなぜ禁断のアイテムかというと、基本は100%デフロックなので超ドアンダー。コーナーで曲がらなくて悲鳴を上げていると、いきなりオープンデフになって超オーバーステア→スピン。とにかく扱いづらく、装着したほぼ全員が事故に至らずとも恐怖体験をすると言われています。あまりに危険なので、L.S.Dが普及した現在はほとんど見ることがなくなりました(が、無くなってはいません)。
デトロイトロッカーのネガティブな面を改善するためにL.S.Dが進化したのですが、L.S.Dでは真似のできない「パワーが食われない」というメリットがあり、ドラッグレースや最高速競技では現役で使用している人も居ます。
L.S.Dはロックする際に摩擦が発生するため、どうしてもエンジン出力を熱損失しますが、そもそも最初からロックしている状態なので直線を走る分にはデトロイトロッカーの方がロスが少ないのです(その代わりコーナリング時にはタイヤ摩耗によるロスが過大)。
最高速競技は、パワーやギア比、空力に目が行きがちですが、最後の最後の僅か数キロ差…という部分では、L.S.Dのフリクションロスも記録に影響して来るため、このようなパーツを今なお必要とする仕様が存在するのです。
ちなみに、デトロイトロッカーはL.S.Dが開発されるよりも前の時代に定番だった「デフロックとオープンデフを自動切り替えする装置」でしたが、今ではより安全な電子式デフロックが販売されています。こちらはドラッグレースや最高速競技以外ではスイッチOFFすることで完全なオープンデフになり、スイッチONするとデフロックする製品です。
また、「オープンにする必要無い、ドラッグレースしかやらない」という人には、スプールという製品があります。コレは単純に左右のタイヤを直結するためだけの、非常にシンプルな製品です。デトロイトロッカーや電子式デフロックは、直線だけでは無く曲がることも考えた機構ですが、ドラッグレース専用車両の場合には、よりシンプルなスプールが定番アイテムです。
何故いきなり「日本でまったく馴染みのないデフ」の話を始めたのかと言えば、デトロイトロッカーと電子式デフロックが非常に思い出深いパーツだからです。
AVOがまだオーストラリアのチューニングショップだった頃、キャンピングカーを牽引して何km/h出るのか…というギネスブック記録に挑戦した事がありましたが、その際に使用した赤いEAファルコンにデトロイトロッカーを組んでいました。「デトロイトロッカーのお陰で記録が出た」とまでは言いませんが、成功の一助になったパーツです。

そして電子式のデフロックは、ストリート兼ドラッグレース仕様の黒い4thマスタングGTに乗るお客様が長年愛用してくださっていました。
こちらは完全なストリート仕様にも関わらず、仙台ハイランドや富士スピードウェイのドラッグレースイベントで何度も走行したので、実際に御覧になった方も多いと思います。
ギネスブック記録に挑戦した際の記事はコチラ
by avo-motec
| 2022-03-31 16:40
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