最速を狙うためのブーストコントロール |
この速さに秘密は無く、ただストイックに速さを追求してきた結果のタイムであることは、昨日紹介させて頂きました。
それはブーストの管理。
タイムアタックには「パワーアップ=タイムアップ」という法則があるため、あと少し、もう少しという状況では「ブーストを上げよう」という流れになりがちです。
こんな肝心なときに、「勝負掛けたくてブースト上げたらブローしちゃいました」という行為は、エンジンを理解していない愚の骨頂です。
チーム・エスコートのランサーEVOⅨの場合、徹底的に作り込んでいるため、ピストンやコンロッドがパワーに負けることはありません。が、ブーストを上げていけば、いずれ極大パワーの燃焼圧力に負けてガスケット抜けを起こしてしまいます。
つまり、パワーの限界はガスケットが抜ける寸前。ガスケットが抜けないギリギリのブースト圧に設定すれば1番速い …ということになります。
まず、エンジンのウォーターラインに高性能な圧力センサーを追加して、さまざまな状況で走らせつつデータを蓄積します。
蓄積したデータは大切な財産ですが、財産を生かすも殺すも解析次第です。MoTeCのログ解析ソフトi2を使用して、エンジン出力(ブースト圧)に対して、どのような水圧変化が生じたらアウトで、どの範囲ならセーフなのかを数値化します。
数値化することができれば、確実に安全な出力といえる「通常モード」、水圧に変化が出始めるが問題ない「本気モード」、水圧が相当高くなるもののパワーも相当高くなる「勝負モード」というように、ブースト圧を設定することができるのです。
つまり、「ダメかもしれないけどブースト上げて勝負すればタイムが出るかも!」という、ガッツを見せる小学生のようなことは、一切やる必要がないのです。
(実際はブースト圧以外にもNOSを「何回転まで噴くか」「何速まで噴くか」など、他の要素も含めて設定しています)