フューエルインジェクターの話 3 |
エンジンチューニングの世界では、1馬力あたり6ccの燃料が必要と考えられています。
例えば6気筒のエンジンで800馬力なら、800cc×6本のインジェクターに交換して、「使い切る状況」で800cc。これも、1馬力6ccから計算できる数字です。
この「使い切る状況」というのが全噴射です。
吸気行程以外の間も噴射を続けて、ポートに貯まった燃料が吸気行程で一気にシリンダー内に入る…という、微細な制御ではなく、インジェクターを開きっぱなしにして、ブシャーっと燃料が出続けている状態です。

アイドリング1000rpmが10ps=10cc噴射、8000rpmで800ps=800cc全噴射というエンジンがあったとしましょう。雑ですが、出力に対して1本あたりのインジェクター吐出量は以下のように仮定して説明します。
1000rpm=10ps=10cc
2000rpm=50ps=50cc
3000rpm=100ps=100cc
4000rpm=200ps=200cc
5000rpm=400ps=400cc
6000rpm=550ps=550cc
7000rpm=700ps=700cc
8000rpm=800ps=800cc
インジェクターは800psのタイミングで「全噴射」になります。ということは、半分の400ccを噴射する400psのタイミングならば、50%の開弁時間ということになります。
100%が4サイクルの全行程(720度)噴きっ放しということは、つまり50%なら半サイクル(360度)噴射。このエンジンの場合は5000rpmです。そして4000rpmで200ps=噴射量200ccなので、噴射時間は180度となります。
前置きが長くなりましたが
ここからが重要な本題です。
4000rpmで噴射時間が180度ということは、吸気バルブが開く260度よりも短いため、噴射タイミングを調整することで「吸気バルブが開く瞬間を狙って噴射可能」なので、レスポンスや燃費の向上が期待できます。
ところが5000rpmになると、吸気バルブが開いている時間260度に対してインジェクター噴射時間が360度。つまり噴射タイミングをキッチリと調整したとしても、100度も早くから噴射を開始しなければなりません。つまり、クランク回転100度の間はバルブが開く前からポート内にビチャビチャと燃料が貯まっていることになります。
では、同じ800psのエンジンに、1600ccのインジェクターを使用した場合はどうなるでしょうか。
1600ccインジェクターは800ccの倍の容量があるため、同じ量を半分の時間で噴射できます。
5000rpm/400psで噴射する400ccは180度の噴射時間となり、260度カムで吸気バルブが開いているタイミングに合わせられると言うことです。
つまり、800ccのインジェクターを使用するよりも、より高回転まで緻密な噴射制御が可能なのです。緻密な制御は、レスポンス、燃費、黒煙の減少、排気サウンドの軽さなど、たくさんのメリットが生まれます。
これ以外にも、超大容量インジェクターでは無く、「ツインインジェクター」で制御した場合にも、同じ効果が期待できます。例えば800psに気筒あたり800cc×2本のインジェクターを使用すれば、噴射時間が半分になります。
例えばかりで申し訳ありませんが、通常の800psではなく、アルコール系燃料で1200cc全噴射の場合、通常では想定できない程の燃料がポートの中に溢れ返ります。こうなるとポート壁面に残る燃料の量も多くなり、アクセルオフの間もダラダラとシリンダー内に流れ込んでしまうのです。要するに燃料のキレが悪く無駄が多い。ツインインジェクター化は、このような仕様でも噴射時間を短縮できるため、抜群の効果が期待できるのです。
極端に大きい数字で例えましたが、実際には数百ccの容量アップでも、常用域でのエンジンのキャラクターを大きく変化させることが可能。実際にこのようなエンジン制御をおこなっているエンジニア様もいらっしゃいます。
噴射タイミングを1度単位、0.1度単位でチューニングできるMoTeC ECUなら、このようなインジェクターの使い方にも応えます。
つづく
時が流れ、弊社ユーザーでS30Z・キャブチューン仕様が出たため、改めてモーテック化を夢見始めました。
レース未経験ですが、F1とまで行かないにせよレシプロの技術がこんな所まで考える時代なのだと、眠ることを忘れて拝読しています。
また数か月以内に、お仕事で連絡させて頂きたいと思います(^-^)
たくみ

