フェラーリ328 MoTeCフル電子制御 その2 |
ガソリンタンク内の燃料をすべて抜いているから大丈夫…ではありません。キャブレターやKジェトロは、内部に燃料を貯めておくスペースがあり、ガソリンタンクの燃料を抜き取っても、内部に残った燃料が腐り、キャブやKジェトロに深刻なダメージを与えてしまうのです。
フェラーリのようなスーパーカーの旧車となると、どうしても乗らない時間が多くなりやすいため、前述のような理由からKジェトロとの相性は最悪です。
そして、Kジェトロは元々の構造自体が「レスポンスが良いエンジン」を生かし切れない物なので、例え新品だったとしても「スポーツカーのエンジン性能を引き出す」という点で現代のエンジン制御には遠く及びません。
Kジェトロを丸ごと撤去してインジェクション化するにあたり、インジェクターカラー、デリバリーパイプ、スロットルポジションセンサーマウントを製作し、アイドルコントロールバルブをサージタンクに取り付けるという作業が必要です。
しかし、今回はMoTeC M1で制御するにあたり、電子スロットルに変更。アイドルコントロールバルブやスロポジセンサーを追加せずに仕上げました。
MoTeC M1は、従来のM800系と比較して8倍の処理速度を誇りますが、これは単純にハードウェアのスペックが向上したから達成した数値ではありません。従来のM800の動作を人間の歩きに例えるなら「右足を40cm前に出して地面と接触したら後退させ、同時に左足を浮かせて前に出す」的なプログラムになります。セッティングが上手な人ほど、ロボット的な動きではなく人間のようにスムーズに制御できます。
対するM1は「歩くだけなら特に考えなくても歩けるでしょ、普通。道が凸凹してたら注意するけど。」というほどの差があります。誤解を恐れずに言うなら人工知能に近く、より自然でスムーズなエンジン制御をおこなうのが特徴です。
セッティングをおこなったところ、エンジンの左右(前後?)バンクの空燃比が大きくズレていることが判り、タイミングベルト調整が必要と判断。新品ベルトに交換した上で再調整(ボルトが指で回るほど緩んでいるなど、もう少しで大惨事な部分がありました)。
無駄な燃料を噴射せず、全域で適正な空燃比にセットしたエンジンは、驚くほど乾いた排気サウンドになります。Kジェトロ時代とはまったく違う、回せば回すほどウットリする「これぞフェラーリ!」なサウンドに、私たちも本当に感動しました。
つづく
センターコンソールの裏側の配線も、すべてMilspecワイヤーで引き直しました。
メーター裏の純正配線(右)と、引き直したMilspecワイヤー(左)。配線の太さは見ての通りです。純正コネクターの端子はすべて新品に交換しました。