吸気温度センサーの取り付け位置 |
B:エアクリーナーからスロットルの間
C:サージタンクorインテークマニホールド
フルコンで制御する際、どこに取り付けるのが正解でしょうか …という質問の前に、3ヶ所の空気の温度には、どれくらい違いがあると思いますか?
単純に空気が流れているだけなので温度は同じでしょうか。
それとも、パイプやサージタンクの熱で、奧に行くほど温度は上昇するでしょうか。
吸入空気の温度が高いと燃料の気化が促進されますが、温度が低いと気化しにくくなります。つまり、同じ量の燃料を噴射しても、吸気温度によって空燃比が変化してしまうのです。
寒ければ気化しにくい=多く燃料を噴射する必要がありますが、吸気温度センサーからの情報で、ECUはリアルタイムで正確に自動補正をおこない、空燃比を一定にしようとします。
(吸入空気温度が高すぎる場合にも、自動補正をおこないます)
ちなみに、空気は圧力差で過敏に温度変化します。
ターボなどの過給器で圧縮した吸気が、簡単に100度を超える高温になるのは御存知だと思います。
空気は圧力が高くなると温度上昇するのです。
前置きが長くなりました。
図はNAエンジンで、BとCの間にバタフライがあります。アイドリングからハーフスロットルの状態では、Cの部分・サージタンクはエンジンの吸入によって負圧になるため、Bの部分よりも圧力が下がる。空気は圧力が高くなれば温度上昇しますが、圧力が下がれば温度は下降します。つまり、吸入空気温度はBよりCの方が低くなると考えられます。
バタフライが全開になった場合、BとCの圧力差はなくなりますが、エンジン出力に対してエアクリーナーの抵抗が大きすぎたり、エアクリーナーが驚くほど汚れていて吸入制限が掛かると、圧力差が発生してAよりもB・Cの方が空気温度が低くなると考えられます。
ただし、エンジンやパイピングからの受熱もあるので、実際にはAよりもCの方が温度上昇します。
「エンジンが吸入する空気の温度を計測」
「計測した温度に応じて燃料噴射量を補正」
これが吸気温度センサーの役目と考えれば、Aの場所ではバタフライ前後やクリーナー前後の温度差が判らず、Bの場所ではバタフライ前後の温度差が判らないため、Cの場所、つまりサージタンクに吸気温度センサーを取り付けるのが正しい。という考えに至ります。
しかし、答えは「C」ではありません。
MoTeC M800シリーズをはじめとする多くのECUは、Bの位置(バタフライ前)に吸気温度センサーを取り付けることを推奨しています。
サージタンク内は単純に負圧になっているのではなく、オーバーラップによる吹き返しで瞬間的な温度上昇もあるため、吸気温度は一定ではありません。また、アクセルオフ時に温度が上昇してしまいます。このような事情から、Cの位置では正確な吸気温度補正を取ることができないのです。
ただし、最新のエンジン制御(現行の市販車)では、Cの位置に吸気温度センサーを取り付けるのが定番。スロットル開閉で発生する圧力変化と温度変化を同時計測しています。
従来一般的だったエンジン制御は、雑な言い方をすると「空燃比のつじつまを合わせる制御方式」でしたが、最新のシステムは限りなく「エンジンというロボットの頭脳」という表現に近いのです。
Cの部分で発生する「バタフライ開閉による温度差」以外の、吹き返しなどで発生する温度変化も、「自分の身体だから織り込み済みで理解している」ので、スロットル変化に応じた吸気温度変化だけを認識することができるのです。
「寒ければチョークを引いて始動する」
「暖気が終わるまでアクセルを軽く踏んでおく」
そんな時代もありましたが、最新システムはバタフライ前後の敏感な温度差も見逃さず、最適な自動補正で「無駄な燃料を1ccも使わない」エンジン制御がおこなえるところまで来ました。
MoTeC M1シリーズは、まさにこの領域のチューニングを可能とする次世代ECUなのです。
…なので、最初の問題の答えは「だいたいBでM1はC」です!