BMW M635CSi M84セッティング |
本当は3月にお預かりする予定でしたが、弊社の工場スペースの都合で5月末のお預かりとなってしまいました。
作業内容はMoTeC ECUによるエンジン制御ですが、なるべくエンジンルームにオリジナリティを残し、ダイレクトイグニッション化などは、やらない方向となりました。
作業中、このエンジンの素晴らしさを垣間見ました。
6連スロットルが繋がるコレクタータンクを外すと、インマニがタンク内まで伸び、各ポートの吸気管長がすべて均一!
さらに、その先端は綺麗なファンネル!
さらにさらに、ファンネルの接合部はOリングになっていて、ファンネルからポートまでピタリ段差なし!
さらにさらにさらに、スロットルから奥を覗くとポート研磨済み!
流石過ぎて感動しっぱなしです。
車輌をお預かりした時点でパワーチェックしたところ、ノーマルは264.6ps/30.1kg-mでした。
1978年デビューで264psというスペック。
「国産最強255ps」の初代CIMAが登場するのが10年後の1988年。
この数字だけでも驚愕のスペックだということが御理解頂けると思います。
今回は「エンジンの本来の性能を引き出す」と共に、「扱いやすさ」と「純正フィーリングを消さない」というオーダーです。
まずはスロットルの下側にアイドルコントロールバルブを取り付けました。
冷間時やエアコンON時にアイドルアップするため、扱いやすさの面で欠かすことができない装備です。
MoTeC制御になった時点でエアフロは不要になりますが、エンジンルーム内の雰囲気を変えたくないため、エアフロはそのまま付けておこうか…とも考えましたが、あまりに内径が小さいため、80φのパイプに交換しました。
エアフロの入口(クリーナー側)がファンネル状になっていたので、アルミ板を削ってパイプの先端もファンネル状にしました。
クランク角センサーは、デスビを撤去して、ここに新規製作すれば話が早いのですが…
エンジンルームの雰囲気を変えないように、デスビを残してREF/SYNC共に製作しました。
点火コイルは元からMSD製に交換されていたので、点火系はここに1チャンネルのイグナイターを追加したのみです。
この状態でセッティングを始めたところ、インジェクターの吐出量が不足する事態が発生!
燃料が足りず、まだ点火時期も詰めていない状態にも関わらず、この時点で303.8ps/35.5kg-m。
燃料が足りない現状をオーナー様に御相談です。
オーナー様から、インジェクター交換の御許可を頂き、弊社の440ccを使用しました。
画像の緑色のインジェクターです。
インジェクター交換後にセッティングを再度取り直しました。
結果は驚きの323.4ps/38.3kg-m!
こちらの画像がノーマルとの比較ですが、その差は約60ps/8.2kg-m。
しかも全開域だけではなく、ほぼ全域で大きな差となりました。
ここまで来ると、まったくの別物です。
エンジンの仕様変更をしていないので、この数値こそ本当の実力といえるでしょう。
(高回転域でMAPが負圧だったため、エアクリーナーBOXの形状変更や外気導入をすることで、まだまだパワーアップする余力を秘めています)
ちなみにNA3500ccの323.4ps/38.3kg-mを、近い排気量の最近の車輌と比較すると…
ポルシェ997前期3600cc 325ps/37.7kg-m
フェアレディZ33(VQ35HR) 313ps/36.5kg-m
レクサスIS350(2GR-FSE) 318ps/38.7kg-m
おまけ
BMW640i(3.0ツインターボ) 320ps/45.9kg-m
はっきり言って、現代のエンジンと遜色ありません。
32年前の、BMW初の量産市販ツインカム24バルブエンジンの素晴らしさが御理解頂けたと思います。
当時の「M」は、まさに「30年後の未来を先取りする性能」だったのです。
ようやく世界がBMWに追いつきました。