フェラーリ550マラネロ ガレージ・ザウルス様 その2 |
このマラネロですが、相当カッコイイです。
突き出たスポイラーと地を這う車高、リベット留めのオーバーフェンダーにツライチのホイール。
「スーパーカー」のカテゴリーだけではなく、速さを追求する「チューニングカー」としての潔さ、ストイックさにゾクゾクします。
今回は、MoTeC M800でV12エンジンを制御するために、初期設定などのお手伝いをさせて頂きました。
実は456GT以降のフェラーリV12エンジンには、クセがあります。
伝統的なフェラーリのV8や、BBやテスタロッサに搭載されていたV12と、マラネロに搭載されているV12には、構造的に大きな違いがあるのです。
フェラーリのV8が、新旧問わず「フェラーリのV8の音」を奏でる理由は、バンクを挟んだ左右の気筒のコンロッドを、同じクランクピンに接続する“シングルプレーン”という構造にあります。
8気筒なのに、4気筒のようなクランク形状です。
90度バンクの8気筒と組み合わせると、各気筒の点火間隔が均等になり、あの音になるのです。
BBやテスタロッサのV12も、シングルプレーンのクランクシャフトが採用されていて、6気筒用のようなクランク形状です。そして、バンク角は180度。このため、180度V型と呼ばれています。
12気筒が均等な間隔で点火するため、素晴らしいサウンドが発せられるのです。
ちなみにMoTeC Japanでは、便宜上180度V型=ピン共有クランク、水平対向=ピン非共有クランクとしています。言葉遊びではなく、エンジン制御上必要な区別です。
マラネロに搭載されているV型は、それまでの180度ではなく、コンパクトな65度バンクとなりました。
クランクは従来通り、1つのピンに左右バンクのコンロッドを接続していますが、これを65度バンクと組み合わせると、点火が均等な間隔ではなく不等間隔爆発となります。
マラネロだけではなく、456GT以降のV12は、エンツォフェラーリ、ラ・フェラーリなども含め、すべて65度バンクの不等間隔爆発です。
均等な間隔で点火しないエンジンは、均等な間隔で点火しないエンジンにも対応するフルコンで制御するべきです。MoTeC ECUなら、不等間隔爆発の設定をするだけで、問題なく制御することが可能です。
不等間隔爆発の設定は、ゼネラルセットアップ内のオッドファイアーという項目に、点火順序ごとの度数を入力するだけ。非常に簡単です。
ウンチクが長くなってしまいました。
ザウルス様はPDMやキーパッド、ダッシュロガーを初めて御使用くださっているのですが、元の配線からフルMoTeCの配線に変更するにあたり、配線図のボードを作成して、エンジンコントロールのM800、電源管理のPDM30、情報表示のCDL3を問題なく接続し、すべてCANのリンクも完了していました。
エンジンを組んだりターボを取り付けるのとは違い、配線作業には別の難解さがあります。今回は12気筒用にエキスパンダーを2基使用しているうえに、元々使用していたモニターからの変更という問題もあります。元の配線と合わせれば百数十にもなる配線を、サクサクと短期間で仕上げてしまう技術力に感動しました。