ブーストコントロール その3 |
MoTeC ECUのブーストコントロール機能も、色々と応用を効かせることができますが、オマケの機能よりも、しっかりと目を向けなければならない基本性能が2つあります。
設定ブーストまで素早くブーストを立ち上げること。設定したブーストにピタリと安定させること。
この2つです。
ブースト圧を設定すれば、その数字にピタリと合わせることができるのがコントローラーの特徴ですが、ブーストコントローラーはピタリとブーストの値を合わせるために、アクチュエーターやウェストゲートを常に微調整させています。
市販品では、「ソレノイド式」や「ステッピングモーター式」など、機構の違いを各社がアピールしています。
でも、それと同じかそれ以上に重要なのが、制御ソフトです。
設定圧まで鋭く立ち上げるゲイン
ブースト圧を設定値に近付けるゲイン
細かいブーストのズレを安定させるゲインなど、
ブーストを制御するための設定が盛り込まれています。
市販のコントローラーは、各社ごとにこの部分に違いがあり、それぞれ個性があります。
この中でも一番定番となっている「設定圧まで鋭く立ち上げるゲイン」について解説します。
電子式ブーストコントローラーの最大の特徴が、この鋭い立ち上がりです。
前回「ブーストコントロール その2」で説明した通り、アクチュエーターやウェストゲートなどの排気バイパス装置は、バネの力で閉じている弁が、排気の圧力で開き、設定ブースト圧でバネと排気の圧力が釣り合うように設計されています。
しかし、これでは弁が徐々に開き、開き始めると立ち上がりが緩やかになってしまいます。
そこでブーストコントローラーは、設定ブーストのギリギリまで弁を閉じ、一気に開くことで立ち上がりを良くしています。
この部分の制御は、車種ごとに楽勝だったり難しかったりします。
本当は自動で制御した方が良いのでしょうが、「ゲイン」という調整機構で現車合わせする物が多いようです。
ブースト設定に対する考え方は、大ざっぱに2種類あります。
ひとつは、1.6キロには対応できないけど、1.5キロに対応できる仕様なので、ピタリと1.5キロで制御するという物です。
この場合重要になるのは、設定ブーストを絶対に超えずに、ピタリと1.5キロにブーストを安定させるゲイン調整です。
もうひとつは、1.5キロまで大丈夫なら、普段は1.4キロ。オーバーシュートで1.5キロまで上げた方が、加速が鋭くなる。という考え方。
ブーストの立ち上がりを追求していくと、勢い余って設定ブーストを超える「オーバーシュート」が発生します。
これはブーストを正しく制御できていない状態なのですが、オーバーシュートで上昇するブースト圧に対応できる仕様なら、結果的にブーストの立ち上がりが良くなると考える人は少なくありません。
この、どちらにも対応できるように、「ゲイン」で調整できるようになっているのです。
当然、MoTeC ECUのブーストコントロールでも、この立ち上がりの部分は詳細に設定できます。
ただし、MoTeCの場合には、この部分以外の「市販品なら自動でやってくれる」部分まで
すべてを詳細にセッティングで詰めていくことができます。
世界中から最高のブーストコントロール機能と賞賛される部分は、まさにここです。
次回は、「立ち上がり」以外の制御について解説します。