BMW328Ci スーパーチャージャー |
ソフトウェア関係のお仕事をされていて、MoTeCのECUマネージャーを自由自在に使いこなし、御自分でセッティングされています。
注目は遠心式コンプレッサーのスーパーチャージャー(以下SC)。
ベルトを掛けるドライブの部分はHKS製ですが、圧縮空気を送るコンプレッサーはRotrex製に交換。珍しいハイブリッド(?)仕様です。
●遠心式SCとは●
広義では、回転数と共にフリクションが高くなるルーツ式と比較して、高回転時のフリクションロスが低く、高回転のパワーも楽しめるのが特徴とされ、、、
ルーツ式SCよりも上のパワーは出るが、下のトルクは出ない。
ターボよりも下のトルクは出るが、上のパワーは出ない。
…となっています。
この表現は非常にあいまいです。
どれも下のトルクを出したければ小型を選択すれば出せるし、上のパワーを出したければ、目標出力に見合う風量の物を選択すればいいだけです。
その証拠に、先日紹介したルーツ式SC搭載のポルシェ993は、下からトルクが出ていますが、パワーもトルクも気持ち良く仕上がりました。グラフを参照してください。
https://www.facebook.com/motec.jp/photos/pcb.1060218707432046/1060218584098725/?type=3&theater
一般的に、過給器を交換したりボルトオンする際は、目標馬力を想定してサイズを選択します。
例えば、400ps仕様を作るのであれば、どの過給器でも400ps出る物を選択するのがスタートラインです。
もし400ps出なかった場合は、上のパワーが不利だったのではなく、単なる選択ミスです。
当然、同じ400psでも、過給器の種類やサイズの選択次第でトルクの出方は変わります。
その中での傾向として、トルクバンドを何回転くらいに設定するのか、何回転くらいで力強く加速して欲しいのか…という要望に合わせて、過給器それぞれの個性が生きるように選択するのがベストだと思います。
実際に弊社で遠心式SCを使用して感じる特徴は、
エンジン回転の上昇と共にブーストが掛かる構造なので、低速域はルーツ式ほどトルクがありません。
(同じようなサイズのプーリー比の場合)
で、
下のトルクと上のパワーを増やそう
↓
プーリー比を変更しよう
↓
オーバーレブでSCが壊れる
…とならないためにも、プーリー比は高回転域でSCがオーバーレブしない回転数に設定する必要があります。
それを考えずに適当なサイズのプーリーを使うと、回転に耐えられずにプーリーが飛んだり、ベルトが千切れるトラブルが発生します。最悪の場合はSC本体が壊れます。
弊社では、ターボやSCと比較して、明らかにグワッと来る特性が無いのは、「クセの無いフラットなフィーリング」と考えます。
(サイズやプーリー比の選定次第で、フィーリングの味付けも可能です)
特に高圧縮NAに過給器をボルトオンする場合、極低回転域でブーストが「掛かって欲しくない」領域があります。
小型のターボでは困ることがありますが、SCはエンジン回転の上昇と共に過給圧が上昇するので、あまり難しく考えなくても大丈夫。この点が楽です。
ちなみにブースト圧は、設定圧で開くリリーフバルブを取り付けるか、リストリクターで吸入空気量を制限することで調整します。ターボのように手元のスイッチでブースト圧を変更することはできませんが、一度完成してしまえば、煩わしい設定無しで乗ることができます。
この御客様のSCは、ワンオフ装着されている上に、コンプレッサーもROTREX製に変更するなど、キット物の組み合わせとは異なるため、世間一般の「いわゆるHKS製SC」のフィーリングではありません。
まさに世界に一台だけのBMWです。
そんな御客様のお手伝いをさせて頂き、とても光栄です!