993カレラ2 スーパーチャージャー その4 |
アクセルオフすると排気エネルギーが途切れるため、コンプレッサーが減速して過給もおこなわれなくなります。
コンプレッサーからスロットルまでの管路に貯まった圧力は、アクセルオフ時にコンプレッサーから逆流(バックタービン)するため、ブローオフバルブ(リサーキュレーションバルブ)から抜いて減圧します。
これに対して、ルーツブロワータイプのスーパーチャージャー(以下SC)は、エンジン直結のベルト駆動。アクセルオフでもエンジン回転が落ちない限り、減速せず回転を続けます。そして、回転している限り過給を続けます。
しかも、ターボチャージャーと違い空気が逆流しないワンウェイな構造なので、バックタービンのような逆流は起きず、管路内の圧力がどんどん上昇してしまいます。
ブローオフバルブやリリーフバルブを装着することで減圧は可能ですが、ターボ以上に確実な作動が要求されます。また、もし作動しなかった場合に深刻な問題に発展するケースもあります。
単純にパイピングが抜けるだけならまだしも、リンク先の動画(14分40秒付近)のように、過給に押されてスロットルが開きっぱなしになるケースもあります。動画内でも「危ない!」と言ってますが、超高速領域では暴走機関車になる危険もあります。
https://www.youtube.com/watch?v=wWWRuO161gQ
(ちなみに弊社では、何台もこの車を現代化して、普通に乗れるようにしています)
この問題を手っ取り早く確実に解消する方法として、スロットルバタフライの位置を、サージタンク入り口からスーパーチャージャーの入り口部分に移設する方法が一般的です。
アメ車のボンネットを突き破ったV8エンジンの上に、ドンと載せたSC。さらに上に吸気ダクト…というアレは、ただのダクトではなくスロットルバルブであり、あそこがキャブレターなんです。
ポルシェ993に限らず、一般的な自動車は、上の略図のように、サージタンクやインテークマニホールドの入口部分にスロットルバタフライがあります。
これはエンジンの構造として常識です。
ところが、SCには「過給し続ける構造上の特徴」があるため、SCの前にスロットルバルブを移設するのがベストとなります。上の略図の位置にスロットルを移設すれば、スロットルオフでSCの吸入を遮断できるからです。
この993に取り付けられたキットのSCは、さらにスロットルバルブと連動して開閉する機械式リサーキュレーションバルブを装備してあります。つまり、アクセルオフ時の問題に対して二重の措置を施しているのです。
バタフライがエンジンから遠く離れてしまいますが、レスポンスには問題ありません。アクセルオフで回転が低下するターボは、再過給までに若干のラグが発生しますが、アクセルオフで減速することなく回転を続けるSCは、アクセルを踏み込んだ瞬間から過給開始。NAのようなアクセルのツキと自然なフィーリングが特徴です。