993カレラ2 スーパーチャージャー その3 |
ターボは排気ガスの力でコンプレッサーを駆動しますが、画像のルーツブロワーはエンジンの力で回るベルト駆動です。
「コンプレッサー」
「ブロワー」
ふたつの単語が出てきました。
共に空気を送る装置ですが、性能や意味がまったく異なります。
コンプレッサーは圧縮空気を送る装置の総称です。
ブロワーは送風機です。
コンプレッサー内部で圧縮した空気をエンジンに送るのがターボ。
メリットは排ガスの二次利用で出力を追求できること。
デメリットはターボラグと、圧縮による空気の温度上昇。
ブロワーは送風機
エンジン直結ベルト駆動でNAフィーリングの過給。
デメリットはエンジンの駆動ロスと高圧縮できないこと。
SCはエンジン直結のベルトで駆動します。
つまり、エンジンのパワーで回しているため、SCを回すためにエンジンパワーが消費されます。
大ざっぱに説明すると、300psのNAエンジン(450psまでのパワーで壊れない耐久性あり)に風量450psのSCを付けました。でも、SCを回すのに50ps消費するから、出力は差し引きで400psになりました。
という感じです。
また、コンプレッサーではなくブロワーと呼ばれる理由は、ルーツタイプは圧縮空気を作る装置ではなく、元々は送風機だったからです。
ルーツブロワーと似たSCに、リショルムコンプレッサーというタイプがあります。
こちらはルーツブロワーに強力なヒネりを加えたような形状で、文字通り内部で空気が圧縮され、圧縮空気を送り出すことができるコンプレッサーです。
現代のルーツブロワーは、羽根(?)の数が2枚から3~4枚に増え、リショルムのように少しずつヒネりが付き、圧縮空気を送り出せるコンプレッサーになりました。
内部圧縮された空気は当然ながら高温になるので、パワーを上げるためにはインタークーラーの追加が有効です。
次に、SCのサイズ選択。
サイズ選択は、チューニングに際し非常に難しい問題となります。適当なサイズの物を適当に付けてベルト駆動すれば…という物ではありません。
まず、エンジンにレブリミットがあるように、SCにもレブリミットがあります。
例えばエンジンのレブリミットが7000rpmだったとして、最低でも、そこまで回してSCがオーバーレブで壊れないプーリー比にする必要があります。
これは大前提です。
SCのサイズは最大出力から選択できますが、問題はプーリー比です。
以下の数式にプーリー径を代入することで、適切なサイズを求められます。
最大SC回転数=クランクプーリー径÷SCプーリー径×エンジン回転
SCがレブリミットを超えない設定にするのは当然として、そのプーリー径で、求める出力が出せなければ何の意味もありません。
エンジンのトルクバンドに合うように、SCの効率を見極めて回転数が合うプーリー径を求めます。
次は、SCのサイズ。
壊れないレブリミット設定は良いのですが、そのプーリー比で最大トルクを出したい回転数=SCが最大効率を発揮する回転数になるのか。という問題があります。
例えば300psが目標のエンジンに、風量600psのSCを組んだとします。
大きい物ほど駆動エネルギーが必要になるため、低速トルクがガタ落ちになります。レブリミットが同じになるプーリー比ではロスが大きいため、SCの回転数を落としてエンジンを楽にさせると、今度はSCの効率も落ちるため、ちっとも速くないエンジンになってしまいます。
また、排気ガスの圧力でブースト圧を調整できるターボと違い、SCは基本的にブーストの調整ができません(方法はありますが)。目標出力よりも大きいSCを組む場合は、リストリクターを装着したり、リリーフバルブから大気開放してブースト圧や最大出力を制限します。
ただし、リストリクターは最大トルク発生回転域までの加速やレスポンスまで悪化してしまうため、リストリクター無しで回せるサイズを選択するのがベストです。
総合すると、プーリー比、効率、最大風量が、求めるエンジン性能にピタリとマッチする選択こそ、SCチューニングで最も重要であり、もっとも基本ということです。
しかし、現実的には数十馬力単位で細かくサイズ設定されている訳ではないため、市販されている物の中から選択する方法しかありません。
ショップ単位で調整できるのは、せいぜいプーリーを削り出してサイズ変更する程度のことです。
(SCのレブリミットを考えず、適当にプーリー比を変更するのは論外です)
以上はSCをボルトオンする上で最低限の常識です。
非常に複雑な上に、プーリー径を算出してワンオフで削り出す…というのも、ストリートチューニングでは非現実的です。
このため、サイズやプーリー径をプロが選択して結果が出ている「ボルトオンキット」を選択するのがベスト…というか、手っ取り早いです。