BMW M635CSi |
M635CSiは、1984~1989年に発売されたスーパークーペです。
ボディは6シリーズと共通ですが、エンジンはホモロゲマシンのBMW M1に搭載された、M88型(3453cc直6)。まさに「羊の皮を被った狼」的なモデルです。
ベースモデルの6シリーズのスタイリングは70年代テイスト。スカイラインならケンメリ、フェアレディZなら初代後期のS31、セリカもダルマやLBが発売されている時代に登場しました。
6シリーズがカタログ落ちしたため、このE24というモデルの生産終了と共にM6も無くなりましたが、BMWやトヨタが「V10エンジンでF1に挑戦!」的な機運が高まった2003年に、S85B50型4999ccV10を搭載するE60型M5が登場。このクーペモデルとして、実に16年振りに同V10エンジンを搭載してM6は復活しました。現在もS63B44B(4.4L V8ツインターボ)を搭載するM6が発売されています。
前置きが長くなりましたが、このM6は弊社のお客様からの御依頼で、MoTeC制御化の御見積をさせて頂きました。
M88型エンジンの特徴は、DOHC+6連スロットルです。
日本では残念なことに、DOHCの直6NA+6連スロットルの量産車は皆無に等しく、トヨタ2000GTやハコスカ/ケンメリGT-Rの3連装キャブレターや、スカイラインのオーテックバージョンなど、特別なモデルしか存在していません。
6連スロットルには、派手なカムを組んだ際に吸気干渉を抑えることができたり、アクセルレスポンスを鋭くできるメリットがあります。デメリットは、設計が悪いと各気筒の同調を揃えるのが難しくなったり、部品点数が増えるためにコストが上がってしまう部分です。
BMWの素晴らしいところは、この時代のモデルにも関わらず、電子制御のインジェクションが採用されているところです。他のヨーロッパ車は軒並みKジェトロやKEジェトロニックなので、とても先進的といえますが、残念なことにグループ制御です。
一般的には、各気筒に1本ずつインジェクターがある場合、バルブの開くタイミングに合わせて燃料が噴射されますが、グループ噴射は6個のインジェクターが同時に全部噴射します。処理速度が高く、信頼性も兼ね備えたECUが高コストだったために、このような選択だったのでしょう。MoTeC制御にすることで、レスポンスやフィーリング、燃費の改善が見込まれます。また、元から電子制御インジェクターが付いているため、燃料系の変更が不要です。これがKジェトロだと、この部分の交換やデリバリーの製作などにも費用が掛かってしまいます。
実際に作業するのは来月からとなりますが、とても素晴らしいコンディションを維持している車輌なので、エンジン本来の性能を存分に引き出せそうです!