ブーストコントロール その2 |
基本となる機械的な部分の構造と配管について解説します。
ターボチャージャーは、排気ガスの圧力で回転して圧縮空気を送り出す装置です。排気ガスの圧力が高ければ回転数が上昇しますが、圧力を下げれば回転数が落ちて送り出す圧縮空気が減ります。
つまり、排気の圧力を調整すれば、ブースト圧の調整が可能です。
この排圧調整をしているのが、アクチュエーターやウェストゲートというパーツ。排気圧力を抜く「逃がし弁」です。
この逃がし弁には、アクチュエーター式とウェストゲート式の2種類があります。
どちらの弁も排気の圧力が常に開く方向に押していますが、簡単に開かないようにバネの力で押さえつけています。
基本的には、設定ブーストで押すことで「逃がし弁」が開くバネレートに設定してあり、排気が抜けて圧力が下がると、ターボの回転数が落ちてブーストが安定します。
図を見て頂ければ判りますが、一般的なアクチュエーター式はバネの力で閉じていて、ブースト圧でバネを押すと開きます。静位置よりもロッドが伸びる方向で開く構造です。
ただし、バネの設定以上に排圧が高くなると、排圧に押されて勝手に開いてしまいます。そんな場合はバネレートの高い強化アクチュエーターに交換します。
ちなみに、バネ室側にも圧力を入れられる、ウェストゲート(後述)と同じ制御方法のアクチュエーターもあり、当社ではこのタイプのアクチュエーターの制御もテストしています。
ウェストゲート式は構造が逆さまで、静位置よりもロッドが縮む方向で開く構造です。
アクチュエーター式は「ブーストを掛けることでバルブが開く」という構造ですが、それとは逆で掛かっているブーストを抜くと開きます。
図のように、上下の部屋に常時圧力を掛けていますが、バルブを閉じているのはバネだけの力です。
設定ブーストに到達すると上のバネ室の圧力が制限されて、下の圧力にバネが押されて開きます。
ウェストゲートも、設定ブースト以下で勝手に開いてしまう場合には、高い排圧に対向できるバネレートのスプリングに交換する必要があります。
ちなみに、ブーストコントローラーの配管には様々な方法があり、下の図のような方法でもブーストのコントロールは可能です。
一般的ではありませんが、アクチュエーターと同じ考え方の配管です。
バネレートは、設定したいブーストよりも早い段階で開いてしまう場合に強化が必要です。これはブースト圧やパワーの数字ではなく、排圧が高い場合に必要になります。
サイズの大きいターボに変更したことで出力は向上しますが、ウェストゲートのバネレートを下げる必要があるという例があります。
T78タービンでブースト1.4キロを掛けていた仕様から、T88H-38GKに交換してブースト1.4キロに仕様変更したとします。
この時、ウェストゲートのバネレートが同じままだと、ブーストが2キロ近くまで上昇してしまう可能性があります。
これは、ターボが大きくなったことで排気の抜けが良くなり、排圧が下がるためです。
ウェストゲートもアクチュエーターも、中に入るブースト圧だけで開くのではなく、弁を直接押す排圧の力があって開くのです。タービンを大きい物に交換すると排気の抜けが良くなるので、ウェストゲートのスプリングを弱い物に交換して、低い排圧に対応させる必要があります。
この状態とは別に、弱いスプリングを組んでいるのにブーストが安定せず上昇する場合は、ウェストゲートの容量不足が考えられます。マフラーに戻している場合には、戻す場所で排気干渉が発生している可能性もあります。
より大口径のウェストゲートに交換することで解決できる場合が多いですが、それでも無理な場合にはウェストゲートを2個付ける必要がある場合もあります。
ウェストゲートとアクチュエーターの構造と配管は理解できたでしょうか。
次回はこれらを制御する、MoTeC ECUのブーストコントロールについて解説します。