アンチラグ |
アクセルオフの際にタコ足内で混合気を燃焼させ、その燃焼圧力でタービンの回転を維持できるため、周回、ジムカーナ、ドラッグ、ラリーなど、あらゆるシチュエーションで威力を発揮する、タイムアップの秘密兵器です。
実際の手順は、アクセルオフに合わせてひとつの気筒の点火時期を大幅に遅角し、混合気が燃えながらタコ足に排出されるようにします。続く気筒では点火をカットして、混合気をそのまま排出。燃焼しながら排出された最初の気筒のガスにより連続的にタコ足内で着火。これによって発生した燃焼エネルギーでタービンを回しています。
つまり、遅角と点火の間引きを最適なタイミングに設定するのが、アンチラグのセッティングです。
アンチラグはアクセルオフで作動しますが、当然ながら燃焼には酸素が必要です。電子スロットルを装備しているエンジンの場合、アクセルオフ中でもECUが必要な量だけスロットルを開くことができますが、通常のワイヤーリンクスロットルの場合は、アイドリング用のAACやISCVバルブを全開にして、ここから入ってくる空気の範囲で設定します。
AAC(ISCV)バルブは、簡単に説明すると小径の電子スロットルで、アイドリングを一定の回転数に保つために、ECUが開度を自動調整しています。
(アンチラグの最中におこなわれる遅角燃焼は、ピストンが上死点を過ぎてから点火しているので、これによってアクセルオフ中に回転数が上昇したり加速することはありません)
ちなみに、アンチラグ作動中にマフラーから発せられる「パンパン」「パパパパ」という高い音は、タコ足内で燃焼しなかったガスが、マフラー内で燃焼した音です。
タコ足内(タービンの手前)で燃焼することが重要なので、マフラー(タービンより後ろ)で発生する音はセッティングが合っていなかったり、燃焼しきれていない事を意味します(タコ足内で燃焼した場合は、タービンを回すことでエネルギーが減衰するので、「ポコポコ」「ポンポン」という感じの音になります)。
MoTeC ECUで設定する場合、リタードし過ぎてもカットし過ぎてもパンパン音が出てしまいます。音が出ないように小さい数値を入力すると、アンチラグの効きが甘くなる場合もあり、完全にパンパンという音を消すのは難しいです。
チューニングカーにアンチラグを設定する場合、注意しなければならないのは、タコ足やタービンなど排気系の温度が上昇することです。
赤熱化するほどの温度になるため、しっかりと対策をしないとエンジンルーム内の樹脂やゴム類が溶けたり、車両火災になる危険があります。
レース車輌の場合はしっかりと対策してあるので問題ありませんが、ストリート車輌の場合は遮熱や導風、燃料配管の移動などの対策を、充分過ぎるほど施す必要があります。